2020年3月「コロナショック!!」全企業で前年割れ
3月は新型コロナウイルス感染の影響が本格化し始めた月度となった。
大きなきっかけとなったのは、全国の小中学校、高校、特別支援学校を3月2日から春休みまで臨時休校とする要請だった。
この要請の与えたインパクトは大きくお年寄りは怖がって外出を控えるようになり、
セレモニー商戦の最終章は不発に終わってしまった。
生活者の日常活動が行えない非日常化の始まりでもあった。
子供達の長期休日によって生まれた需要もあっただが、
それも3連休の最終日まで。五輪延期の報とともに堰を切ったかのように、
外出自粛要請の発表。3月最終週の土日は都内の主要百貨店、
ファッションビル、大型ショッピングセンターなどが一斉休業という前代未聞の事態となった。
各企業の3月実績はそれぞれの施策以上に、これらの外的要因によるところが大きい。
「巣ごもり消費」はアパレルにも影響していてネット経由による売上増、実店舗では売上減は共通項。
しかし、ネット経由による売上だけでは全てをカバー出来るほどのパワーは見込めず、
EC環境の整備状況がそのまま3月度の数字に表れた。
ユナイテッドアローズ(既存店*1)売上高75.8%、客数87.2%、客単価85.4%
〈主要施策〉オリジナルブランドBRACTMENT「2020SPRING COLLECTION」/
〈話題の取り組み〉ハイゲージコットンスウエットシャツ(AURALEE)、KevinCummins撮影BjorkフォトプリントTシャツ(idilliaco)/
〈注目アイテム〉〔レディス〕[手洗い可能/サラフール] ノーラペル ジャケット(税込15400円)、トリアセ マットクロス ダブル テーラード ジャケット (税込み17600円) 、〔メンズ〕テープヤーン リンクス編 クルー ニットベスト (税込み6490円)
今月は前年同月と比べ休日が1日少なく-1.2%程度の影響があったと推測される。
コロナウイルス感染拡大による営業時間の短縮や週末営業の自粛など都内店舗を中心に実施した。
リアル店舗のみの既存店売上高を見ると61.2%とかなり厳しい数字となった。
子会社のカジュアルチェーン店(86店舗)のコーエンも全社売上高前期比は73.9%と全業態に影響があった模様。
ユニクロ(既存店*2)売上高 72.2%、客数 67.6%、客単価 106.9%
〈主要施策〉JWアンダーソン2020春夏コレクション発売/
〈話題の取り組み〉ディズニー・ラブ・ミニーマウス・コレクション・バイ・アンブッシュ発売/
〈注目アイテム〉〔レディス〕: スラウチテーパードアンクルジーンズ(税抜き3990円)、ワッフルオーバーサイズクルーネック長袖T(税抜き1500円) 、〔メンズ〕U企画クルーネック長袖T(税抜き1990円)
新型コロナウイルス感染症の影響から客数が大幅に減少。
3月は最大で約260店舗を時間短縮営業、3/28,29の週末は63店舗を臨時休業となった。
又、政府の「緊急事態宣言」発表を受けて東京都内の店舗を中心に営業時間短縮や4/8~5/6まで休業決定し、
4月の売り上げも厳しい数字が予測される。
2020年8月期上期実績は、売上高1兆2,085億円(前年同期比▲4.7%)、
営業利益1,367億円(前年同期比▲20.9%)と減収減益となった。
暖冬の影響から冬物衣料の販売苦戦、新型コロナの影響もあり、
国内ユニクロ事業の売上で▲277億円、海外ユニクロ事業で▲387億円、
ジーユー事業+150億円と基幹事業で足を引っ張った。
新型コロナ感染による影響は、国内ユニクロ事業で4月→5月▲30~▲10%、
6月→8月▲10~▲5%と予測。通気予想は売上高2兆900億円(前期比▲8.8%)、
営業利益1,450億円(前期比▲43.7%)の減収減益を見込む。
アダストリア(既存店)売上高 75.8%、客数 80.0%、客単価 94.7%
〈主要施策〉対象商品購入で先着アクロン洗剤プレゼント(グローバルワーク) /
〈話題の取り組み〉Fun GOING on LIFE(スタジオクリップ)、韓国ブランドshe said thatコラボレーション(ニコアンド) /
〈注目アイテム〉〔レディス〕美(うつく)シルエットテーパードパンツ(税込4290円)、ジェギンズ(税込6050円)、 〔メンズ〕MOTION TECHスキニー(税込4950円)
2020年2月期の決算が発表された。売上高2,223億76百万円(前年同期比0.1%減)、
営業利益128億85百万円(前年同期比79.2%増)、経常利益128億43百万円(前年同期比74.8%増)と減収増益だった。
しかし、全体の94%の構成比がある国内売上は2,097億9百万円とプラス1.1%の増。
基幹ブランドの「グローバルワーク」、「ローリーズファーム」の復調が寄与したようだ。
収益面でも値引き販売を抑制する運営によって値引き率が改善、
売上総利益率は55.5%と前年同期比1.6ポイント増となった。
月を通じて国内店舗の約9割で1~2時間の短縮営業を実施、
月末週末の外出自粛要請によって関東エリア277店舗で休業、
その反面としてEC販売が伸長、
自社、他社ともに前年比110%を超えたが影響は限定的だった。
良品計画(既存店)売上高 72.8%*3、客数 92.3%、客単価 92.5%
〈主要施策〉無印良品週間(3/20~4/7)/
〈話題の取り組み〉3/26まで期間限定価格/
〈注目アイテム〉〔レディス〕ムラ糸裏毛ジップアップパーカー(税込2990円)、太番手天竺編みドロップショルダー七分袖ボーダーTシャツ(税込み2990円)、〔メンズ〕日焼けを防ぐUPF50ジップアップパーカー(税込み2990円)
新型コロナウイルスの影響から客数が前年を下回った。
食品、生活小物は好調に推移したようだがファッション衣料など急を要しない商品群は伸び悩む。
本来ならば「新生活準備」をテーマに盛り上がりを見せる月度だが、
今年は始業開始日もそれぞれで足並みが揃わず来店による購入客が例年に比べて少なかったのではないかと思われる。
*しまむら(既存店)売上高87.9%、客数 87.5%、客単価 100.9%
〈主要施策〉ベビー&キッズフェア/
〈話題の取り組み〉韓国アイドルグループOH MY GIRLコラボ /
〈注目アイテム〉〔レディス〕カス残しベルト付ストレートパンツ(税抜き1790円)、ラメ入り透かし編みニット(税抜き1790円)、〔メンズ〕コットンUSA裏毛トレーナー(税込み1500円)
しまむらの2020年2月期決算発表によると売上高5,160億68百万円(前年比4.4%減)、
営業利益234億85百万円(前年比10.2%減)、経常利益235億51百万円(前年比10.5%減)と減収減益。
消費増税による消費マインドの冷え込み、4、7月度の低気温と記録的な暖冬、
台風上陸による店舗休業や営業時間の短縮など衣料品販売に厳しい環境だったと分析。
今期2021年度の業績見通しについては、コロナ感染拡大による来店客数減が見込まれ、
売上高減少の適正かつ合理的な算定が困難であるとの事から、業績見通しを見送った。
3月次は3/2週に売上が大きく落ち込んだ。紙おむつやお尻ふきなどの衛生雑貨が好調だった反面、
ミセス、シニア向けジャケットや婦人のセレモニー関連スーツなどの販売が伸び悩んだようだ。
ライトオン(既存店)売上高 60.9%、客数 64.7%、客単価 94.2%
〈主要施策〉LINE友だち限定キャンペーン(5,000円以上10%OFF)/
〈話題の取り組み〉期間限定ベーシックTシャツ2枚目半額、快適を着るAGED LINEN/
〈注目アイテム〉〔レディス〕アートプリントトレーナー(税抜き3990円)、〔メンズ〕キャンプセブン・スリーブロゴプリントロンT(税抜き3990円)、プラスワン・ベストレイヤード7分袖Tシャツ(税抜き3990円)
新型コロナウイルスの影響もあって集客が著しく減少、既存店売上高は大きく割り込んだ。
プリントTシャツやシェフパンツなどの売れ筋商品はあるものの、
全体の売上を挽回するまでには至らず既存店売上高の前年割れは10カ月連続。
〈3月のまとめ〉風評もあってパニック消費も生まれた
デマの拡散によって店頭からトイレットペーパーや飲料水などが消えるといった事態が生まれた。
しかしこのデマの拡散は最初に投稿された不安を煽ったツィートより、
その後に投稿された善意のツィートと呼ばれる注意喚起のツィートが拡散され、
その結果不安を煽るという想定しにくい事態が起こってしまうものだ。
情報ネットワークの行き届く現代で気を付けなければならないのが
「風評被害」真偽のわからない「噂うわさ」も善意のツィートという翼を広げて拡散していく。
実際、耳にする情報として「○○スーパーの従業員からコロナ感染者が出た」とか
「大型商業施設でコロナ感染者が出た」など。
これが地方に行くと○○市と○○市は都内からの交通アクセスが便利で利用者も多いことから、
「危ない、近づくな!」となるようだ。
コロナウイルス蔓延化防止のため、個々で充分に気をつける必要があると思うが、
くれぐれも行き過ぎには気をつけたいものだ。
3月は高気圧と低気圧が交互に通過したため数日の周期で変化。上旬は低気圧の影響を
うけやすかったが中旬以降は高気圧に覆われて晴れた日が多く、東京では気温も上昇し観測史上最も早い14日に開花、22日に満開を迎えた。
ダウンロード - 3e69c88e6b097e6b8a9e382b0e383a9e38395.pdf
<図表のキャプ>
東京都の平均最高気温は16.0℃、平均最低気温は6.2℃。昨年と比べて最高気温で+0.6℃、最低気温は同じ。29日に南岸低気圧で降雪を記録したものの、全国的にも気温は高く推移した。
(4月商戦のポイント)ネット販売の充実と試される機動力
緊急事態宣言により指定された7都府県では、百貨店のみならずルミネや商業施設でも
5月6日まで休業を決めたところもあって厳しい売上が予想される。
「巣ごもり消費」が主戦場となるに違いないが、生活者のウィルスに対する不安や経済、
生活面に関した不安を鳥拭われないことにはファッション関連のセールは厳しくなる事は安易に想像できる。
そこで俄かに注目を集めているのが「マスク」。
ほぼ世界的にマスク不足は指摘されていて、輸入に頼りっきりの我が国でも
異業種のシャープがマスク生産に着手。
アパレル分野でも「セントジェームス」、「バーバリー」、「ブルックスブラザース」
といったブランドでマスクの生産を始めている。
マスク不足に疲弊した生活者のココロにヒットするマスクを、
いち早くどこが提供できるのか。
出来れば繰り返し使えるようなマスクが有れば便利だろうと感じる生活者も多いだろう、
そんなニーズに応えるそれこそが商魂のあるファッション屋さんの出番となるはずだ。
*印の企業=20日締め、*1=小売既存+ネット通販既存の合算数字、
*2=既存店+Eコマースの合算数字/*3=衣料品部門の数字、文中の売れ筋動向はIR情報および筆者視察によるもの。