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2020年12月 6日 (日)

2020年1月「福袋をやめた企業の売上げが戻らない」

今年の初売りは、市場の飽和感もあってジリ貧化に歯止めがかからない福袋を止める企業が増えてきた。元々、無印良品やユニクロ、ユナイテッドアローズは取扱ないしアダストリアグループも昨年から福袋企画をやめた。そして今年はライトオンもその流れに加わった。福袋商戦については、1年前から工場の閑散期を狙って安価に生産してお値打ち感を出すのが平成時代の福袋だった。それが競争市場の激化によって、購入前に福袋の中身が確認出来るのは当たり前に。中身のサイズカラーのアソートが表記され、中のセット枚数も増えいく傾向にあっては取り組むメリットが年々薄れているのが現状だ。

では、取りやめた企業が福袋分の売上げを、他で稼げているかというと、決して稼げているようには思えない。しかし、在庫リスクや企画・生産労力も踏まえて費用対効果に見合っていないという総合的な判断だろう。確かに福袋とは現在の時代に合っていないビジネスなのかも知れない。

 

アダストリア既存店)売上高 98.4%、客数 97.4%、客単価 100.9%

【主要施策】WINTER SALE MAX60%(グローバルワーク)

【話題の取り組み】Chocolat Color Knit (グローバルワーク)HERSHEY’S KISSESコラボ、ツモリチサトコラボ(ニコアンド)

【注目アイテム】〔レディス〕ツモリチサト コラボワイヤー入ビッグシャツ(税込7590円)、〔レディス〕ツモリチサト コラボワイヤービッグワンピース(税込9460円)/ 〔メンズ〕MOTION TECHスキニーパンツ(税込4950円)

 昨年より初売り福袋を止めて2年目となる、今年は「ハッピーシェアニット」や「リバーシブルボアニット」といった限定特価商品で売り込んだものの、冬物SALE商戦自体に力強さを欠き1月の既存店売上高の前年割れは3年連続。後半の春物企画としてバレンタインシリーズを展開、グローバルワークではチョコレートカラーニットとしてミルクチョコレート、ミルクティーチョコレート、ホワイトチョコレート、ラズベリーチョコレート、ミントチョコレートの5色をそれぞれのチョコレートイラスト・ラベルとともに訴求、目を惹いた。ブランド別では、ローリーズファーム、レイジブルー、ページボーイ等が好調だったようだ。

 

良品計画(既存店)売上高 100.8%*2、客数 110.9%、客単価 86.7%

【主要施策】SALE

【話題の取り組み】~1/14まで期間限定価格、~2/4まで期間限定価格

【注目アイテム】〔レディス〕縦横ストレッチチノバルーンスカート(税込4,990円)、〔レディス〕ウールシルク洗えるクルーネックカーデイガン(税込3,990円)、〔メンズ〕新彊綿オックスショップコート(税込4,990円)

  例年比で高く推移した気温の影響から冬物アウター、ニット、防寒小物は伸び悩んだものの肌着や靴下などの実用衣料が好調に推移して売上を底支えたようだ。期間限定価格は切れ目なく対象アイテムをローテーションさせながら続いている。その結果、買い上げ客数アップと客単価ダウンといった現象を招いている。2020年2月期の連結純利益も従来予想の294億円から251億円への下方修正の発表があって、マーケットからは失望感から株価の下落を招いた。ここにきて中国のコロナウィルスによる影響が懸念されている。6日までの中国の休業店舗は138店舗まで広がっているようで更なる業績への影響が心配される。

 

ユナイテッドアローズ(既存店*1)売上高97.1%、客数94.3%、客単価101.9%

【主要施策】 SALE30-40%OFF+2店以上お買い上げでさらに10%/OFF

【話題の取り組み】FINALSALE UPTO60%OFF(グルーンレーベル)

【注目アイテム】〔レディス〕HAMILTON WOOL MIXメルトンロングPコート(税込49,500円)、〔レディス〕ビーバーノーカラーロングコート(税込23,760) 、〔メンズ〕:THE NORTH FACE ビレイヤーパーカー (税込65,000)

  暖冬で冬物衣料が苦戦した。ユナイテッドアローズも2020年3月期連結業績の下方修正を発表した。前回発表の予想売上高1642→1612億円(▲30億円)、営業利益119→108億円(▲11億円)、経常利益120→109億円(▲11億円)。10月の消費増税による駆け込み需要の反動減やオンラインストアの2ケ月強の停止に伴うネット通販や実店舗のマイナスなどが影響した。ネット通販の自社運営の取り組みから、約12億円のソフトウエア開発について今後の利用が見込めなくなった部分の減損処理を約5億円計上。更なる減損損失が追加で発生する可能性も示唆、自社運営への取組について予定通りには進捗していないようだ。

 

ライトオン(既存店)売上高 88.1%客数 75.2%客単価 117.2%

【主要施策】GO!GO!BARGAIN 最大70%OFF ニューイヤースペシャルプライス5日間限定

【話題の取り組み】元旦限定プライス税抜2020円、人気ブランドボトムス2本目半額

【注目アイテム】〔レディス〕ラグマシーン・バックプリントロゴトレーナー(税抜3990円)、〔メンズ〕キャンプセブン・エンボスロゴパーカー(税抜4990円)、〔メンズ〕チャンピオン・無地クルーネックトレーナー(税抜4490円)

今年から元旦の福袋販売を止め、代わりに年始のセールを実施。大晦日の2019円→元旦は2020年と西暦年度を文字ってセールイベントのアピールをした。秋冬不振の反省を踏まえ、春物から商品価格やテイストの見直しに取り組むようだ。レディスでは今まで取りこぼしていた客層を狙った、新たなヒット商品も出始めているようで、これからの動向に注目したい。既存店売上高前年割れは8カ月連続。

 

*しまむら(既存店)売上高 90.1%、客数 91.6%、客単価 98.8%

【主要施策】歳末感謝祭、初売り福袋

【話題の取り組み】華マルチスーツ(レディスフォーマル)親子で着るヒーローアイテム企画(ウルトラマン、仮面ライダーコラボ)

【注目アイテム】〔レディス〕12Gフリルネックニットプルオーバー(税抜1290円)/〔レディス〕小花柄Aラインタックスカート(税抜1290円)/〔メンズ〕T/C裏起毛雪山モチーフトレーナー(税込980円)

 昨年に比べ休日が1日少なく冬物販売が伸び悩んだ結果、前年同月実績を5カ月連続で下回る結果となった。例年販売している福袋に関して今年は好調だったようで、レディスのコーディネイト福袋が良く売れた。フェミニン5点セット(税込3000円)、ガーリー4点セット(税抜2000円)、マニッシュ7点セット(税込5000円)など。昨年の増税後あたりから安さを強調させるのにチラシやSNSなどでは本体価格表記に切り替えている。455円(500円)、637円(700円)、819円(900円)と衣料品には馴染みの薄い1円刻みの表記で安さをアピールした。

 

ユニクロ既存店*3)売上高 92.1%、客数 94.9%、客単価 97.1%

【主要施策】新春SALE

【話題の取り組み】ミラクルエアー3Dジーンズ、クレイアニメーションパジャマ企画(ベビーサイズ)、初売り税抜1万円以上買い上げ紅白タオルをプレゼント

【注目アイテム】〔レディス〕:スウェットオーバーサイズプルパーカー(税抜2990円)/スウエットクルーネックシャツ(税抜1990) 〔メンズ〕ドライストレッチスウエットパンツ(税抜1990円)

全体的に暖冬の影響が大きかった。ダウンジャケットを始めとした防寒アウターや保温肌着の動きも鈍く既存店売上高は5ケ月連続と秋冬商戦は厳しい結果に終わった。今年は1月末までしっかりダウンコートやダウンジャケットの値引き販売スペースが取られ不振だったシーズンを象徴していた。そうした中でも概ね好調に販売出来たハイブリットダウンは来期380万枚のオーダーを計画しているようで圧倒的な単品販売力は健在だ。ユニクロも無印良品と同様に中国内販の影響が心配だ。中国にある全750店舗の半数にあたる約370店で休業を余儀なくされている。他の営業店舗や不買運動の残る韓国など、これまで好調だった海外売上を牽引してきた東アジア店舗の売上状況について不安を抱える。

〈1月のまとめ〉長引くセールに向けたMDの組立が必要!!

1月は時より寒波に覆われることもあったが、継続した寒さはなかった。「超暖冬」で推移した秋冬は本格化した冬のセールにも影響を及ぼす結果となった。ストライプインターナショナルのように従来の梅春、晩夏を含めた6シーズンMDをやめて、マイナス3度から36度の気温を3度刻みで14分類したカセット納品に取り組むように、往来の企画タームによる組立ではリアルシーズンとの乖離が大きく見直す必要があるだろう。今年になぞらえてみると丈長コートは年内投入が適切だったのか。定時のタイムスケジュールのままだと、プローパー販売期間が限りなく短く、あっという間に冬のセールに入ってしまう。供給側も早々のセールと長期化に向けては段階的な値引き策をとらざるを得ないから、セールインパクトにかけてしまい、客離れの一因になりかねない。

大凡のシーズンセール開催スケジュールは予定しても、気候要素に応じ弾力的なスケジュールにしていかないと業界全体が疲弊しかねない。セール自体が長期化しているのだから、例えば①歳末・②年始・③大寒・④立春(春節)と、①~④回にわたってセール対象商品を組み替えていくことが、これからのシーズンセールには必要となってくるだろう。

 

(2月商戦のポイント)閑散期はターゲットを絞った集客イベントで乗り越える

 コロナウィルス騒動は気になるところだ。一部本文にも触れたが中国国内の店舗を構えている企業は影響を受けることになる。他の企業でも直近のビジネスに影響は出ないものの、2018年ベースでも中国からの衣料品輸入は58.8%と決して低くない。(財務省統計より)10日から工場を再開するところが多いようだが、中国国内での人の移動や他の近隣アジア地域への拡散傾向など注視したい。

2月は閑散期シーズンとなる、この一年で一番寒い時期にあたる月度こそコンテンツ企画も絡めた集客対策が重要となる。アダストリアグループではツモリチサトコラボやバレンタイン企画としてチョコレートメーカーとのコラボレーション、Bリーグとのコラボレーション企画を予定している。しまむらでも人気コミック「鬼滅の刃」とのコラボレーションのように特定のターゲットを絞り込んだ打ち出しで売上を作っていきたい。2月はバレンタイン以外にも節分、プロ野球のキャンプINやグラミー賞大賞の発表など、まだまだ取り組めそうなイベントもあるので、英知を絞って対策していく事が重要となる。

*印の企業=20日締め、*1=小売既存+ネット通販既存の合算数字、*2=衣料品部門の数字、*3=既存店+Eコマースの合算数字/文中の売れ筋動向はIR情報および筆者視察によるものです。税込価格はすべて10月1日以降の増税後価格としました。

【2020年2月に執筆したものです】 

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