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2021年2月16日 (火)

アパレルのショッパーは正か否か?

 私たちは度重なる異常気象や自然災害を目にするたびに、地球環境について考えさせられる。来月、大阪で開かれる20カ国、地域首脳会議(G20)でも廃プラの海洋汚染対策について話し合われる予定だ。使い捨てプラステックストローの紙製化やペットボトルの再生システの確立など連日ニュースとして取り上げられている。そうした流れの中、アパレルショップで当たり前のように使われているショッピングバッグ(後述はショッパーと称する)について、今後どうあるべきかを考察してみた。

ファッション・アイコンとしての役割

業界では、永らくブランドビジネス広告手段の一つとしてオリジナルショッパーが使われてきた。古くはVANの紙袋を小脇に抱えて闊歩する姿や、80年代のDCブランドブームでもオリジナルショッパーはファッション・アイコンとしての役割を担ってきた。さらにハイブランドのショッパーは二次流通や記念としてとっておく人も居るだろうし、高級百貨店のショッパーは今でも、ちょっとした御礼を渡す時や個人間の貸借に洒落た包装用紙として活躍する場面があるだろう。そうした利用価値の認められたショッパー達は、大なり小なりメルカリなどで売買されている。

では、ポピュラーブランドではどうか。購入後に持ち歩く姿を他者から視認されることによってブランド広告的な価値は等しくある。今やブランドサインとショッパーデザインを共有化させブランド認知を深めるようなやり方は、半ば常識として根付いているのが現状だ。

グローバル・プレイヤー達の先行例

そうした中、グローバル展開企業の動きは敏感だ。H&Mは昨年12月から従来のプラスチック製ショッパーを紙製にして、アクセサリー用最小サイズを除くすべてのショッパーを一律120円で有料化した。ZARAもプラスチック製ショッパーから紙製に切り替える計画で、ユニクロはレジ袋以外に商品包装材も全面刷新する予定。無印良品の銀座店では、ほとんどの商品が紙袋に入れられて、寝具や大型の商品についてはポリエステル製の手提げ袋が1枚150円で有料化されている。

このショッパーの有料化はマイバックの持ち込みを奨励する意味合いが強いようで、H&Mでは有料化による余剰金(紙製バッグの製造コストを除いた分)はすべてWWF(世界自然保護基金)ジャパンへ寄付。無印良品では銀座店に限って先の有料手提げ袋を持ち込めば150円キャッシュバックして引き取るとのこと。ショッパーの紙製化は、グローバル展開企業にとって避けて通れない課題といえそうだ。

ハイブランドの取組

ハイブランドについてもエシカル(論理、道徳上の正しさ)やサステイナブル(持続可能)な物作りなどをテーマとして取組むケースが増えている。例えばグッチの加入によって一躍話題にのぼった「ファーフリーアライアンス(Fur Free Alliance)」や、ヴィヴィアンウエストウッドによる「エシカル・ファッションアフリカ」など。枚挙にいとまがないほど多くのブランドや企業が様々な方向性や切り口で「地球環境」、「人権問題」、「動物愛護」などと向き合っている。やはり、インターネットから多くの情報が得られやすくなったことによって取り組みのハードルが下がったことが考えられる。反面、ドルチェ&ガッバーナのように動画広告をきっかけに不買運動が起きてしまったケースや、プラダのウィンドウディスプレイが人種差別的だと批判を浴びて謝罪に追い込まれてしまうこともある。

キーワードはESG,CSR,SDGs

環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとったESGは企業が長期的な成長のために必要な観点として注目されている事も影響している。特に上場している大企業になれば、こうしたESGCSR(企業の社会的責任)SDGs(持続可能な開発目標)への積極的な取組が、今や企業ブランドの価値向上には欠かせなくなっているのも事実だ。

ヨーロッパの4R

環境先進国の多いヨーロッパでは、ゴミを減らすために4Rという原則がある。Refuse(リフューズ)やめる、Reduce(リデュース)減らす、Reuse(リユース)再使用、Recycle(リサイクル)再生。RefuseReduceReuse3つの「R」でまずゴミを徹底的に減らし、物を捨てる行為の最後手段としてRecycleを活用するといった考えのようだ。

レジ袋も有料化の流れに

そもそも小売店のショッパー削減は世界的な流れにある。国連環境計画(UNEP)は、2025年までにプラスチック製のレジ袋やストロー、食器の使用をやめた上に最終的に使い捨てプラスチックの全廃を目指す戦略を、各国がつくるという閣僚宣言が出された。来年3月の第4回国連環境総会(UNEA4)による採択を目指しているようだ。日本でも環境省の「プラスチック資源循環戦略案」で、レジ袋やペットボトルなどの使い捨てプラスチックの排出量を2030年までに25%削減を決定としたものがあって、早ければ来年辺りから全国の小売店、コンビニエンスストアでのレジ袋有料化が義務付けされる公算も出てきた。

これからのショッパーのあるべき姿

ここまでの流れからみてみると、アパレルのショッパーの紙製化と有料によるマイバッグ(エコバッグ)の利用促進が、これからのアパレルショッパーの辿る道となるだろう。しかし、安価なショッパーは今でもゴミの分別や簡易袋として大いに役立っている現実もある。そうした日常に変化を起こすには、継続的な取組の発信と時間をかけながら少しずつ理解を深めていく必要がありそうだ。

(2019年5月31日に執筆したものです)

 

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