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2021年2月16日 (火)

アパレル業界「女性の働きやすい会社」とは

世界経済フォーラム(WEF)は世界153カ国を対象としたジェンダー不平等状況を分析した『世界ジェンダーギャップ報告書』を発表している。

ジェンダー格差が少ない1位から5位までは、北欧のアイスランド、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、南米のニカラグア。

日本はというと前回の110位から121位と順位を下げ、過去最低となった。

同じアジア先進国では中国106位、韓国でも108位とそれぞれ日本より上位にきている。

なぜ、日本のジェンダー格差は他の国と比べ、順位が低いのか。

今回はアパレル業界をイメージしつつ「女性の働きやすさ」について考察と提案をしてみたい。

問題は「古い企業体質と経営者の意識」

初めに女性の就業状況について。

「就業率の推移」の図からは、女性の社会進出の状況が分かる。

今から34年前の昭和61年の女性就業率は57.1%2544歳)、それが2016年には72.7%と右肩上がりと上昇してきた。

バブル崩壊後のデフレ経済下でダブルインカム(共働き)世帯が、新たなスタンダードモデルとして定着してきたが、同時に女性の一時離職に対する対応については長らく問題視されてきた。

右の図のいわゆる「M字カーブ」(女性が出産して離職、子育てを担うことから、大きく従業率を下げる時に生まれるカーブをM字と形容)の問題で、まだ十分とはいえないが、保育施設や学童といった支援施設の増加で「M字」は緩やかになりつつある。

つまり、社会全体で女性の働きやすさに取り組みつつあるわけだが、先のジェンダーギャップ調査で日本が最下位グループに位置付けられている理由は何か?

それは、ひと言でいえば、『古い企業体質と経営者の意識の問題』が大きいと思う。

明治以降から続く家父長制1からくる古き習慣の名残か。企業で長らく役員、管理職を置いた「男性社会の組織」を作ってきたことも影響しているように感じる。

1 家族と家族員に対する統率権が男性たる家父長に集中している家族の形態。日本の明治民法において、家長権は戸主権として法的に保証されていた。

例えば、これまで肉体労働の現場では男性用制服を身にまとった男性は、女性には到底出せない輸送力や打開力を発揮してきた。

これら男性を率いるのも通常、中高年の男性たち。その性格は基本的にホモソーシャル2だった。

2ホモソーシャル(Homosocial)とは、ホモフォビア(同性愛嫌悪)とミソジニー(女性嫌悪)を基本的な特徴とする男性同士の強い連帯関係のこと。体育会系などで顕著に見られる男同士の緊密な絆で、ミソジニーあるいはホモフォビアが伴う。

女性たちに制服を着せたのも基本的にはその中高年男性たち。女性用制服が服従的イメージに落ち着いたのはそのためで、女性にはお茶出しやコップの洗浄、掃除といった家事に順ずるような雑務が仕事としてあてがわれることになる。

そもそも女性にとって必然性はないスカートがなぜ、制服では定番なのか。中高生はともかく成人女性に拘束感の強いミニスカートさえ着用させる理由はどこにあるのだろう。

雑務についても、寿退社が前提となった過去の価値観の名残と思われるが、労働生産人口の減少化とともに女性活躍を望みながら、女性がこうしたことを担当させられるのは本当におかしい。

女性が重要な企画に関わらない組織はナンセンス

現代は全体消費のうち8割が女性の意思決定によるといわれている。この時代に、女性就業者が重要な企画、営業決定権に関わらない組織があるとすれば、それは何ともナンセンスな話だ。

特にレディスファッションを筆頭に、女性をターゲットとした消費財では男性が関与できる部分は限られてくる(男性は「女性ゴコロ」をいくら頭で理解しようとしても実装や使用経験から産まれた気付きは想像でしか入手できない)。

女性ゴコロの代弁は女性から聞き、男性立案の企画でも善し悪しは女性が判別すべきだ。

では、『女性ターゲットの消費材ビジネスは全て女性だけで完結すべきか』

と、いうと、これも違うと思う。

カルディコーヒーファーム(コーヒーと輸入食品の専門店)の店舗は、大半が女性で運営しているそうで、女性ならではの気付きやココロ配りもあり、同店のウェルカムコーヒー(店頭で配られる無料コーヒー)は人気の集客策の一つとなっている。

しかし、現場の声を聞くと、商品移動を含めた力仕事や業務フロー作りといった男性向きの仕事もあり、女性だけの環境が良いとは限らないとの声も聞こえてくる。

つまり、『女性ターゲットだから女性、男性ターゲットは男性なんてくくり方を考えること自体が遅れている』わけだ。

特にファッションについては男性向け商品でも女性が選んで購入する代理購買だってあるし、同伴する女性パートナーの意見を聞いて商品購入を決めるケースも多い。

となると、アパレル業界では、男女それぞれの良さと特徴を考えながらジェンダーミックスさせて、グループ構成していくのが好ましい姿だといえる。

アパレル企業では、商品部や企画開発といった組織が物作りの中枢を担い、そこからターゲット単位に「ジェンダー」「エイジ」「商品カテゴリー」といったグループに組織は枝分かれていく。

女性ターゲットのグループは、女性主体でも構わないが、論点整理や取りまとめ、案件に向けての解決までの工程管理は、男性の方が向いている場合がある。

 男性ターゲットのグループでも女性目線や意見を積極的に取り入れるべきで、アドバイザーとして女性を数人加えることを勧めたい。

もちろん、男女の適性を超えたスキルを備えた人もいるので、性差を超えた「個」に焦点を当てることも必要だろうし、どちらかのジェンダーに偏った組織では、古い価値観のまま突き進み、多様化された価値観とのギャップを見落としてしまいかねない。

躍進するアパレル企業にとって必要なのは、『柔軟さとフラットな感覚も持ちながら男女のバランスが取れているところ』。

そして、女性がもっと自分の仕事に魅力を感じ、誇りを持って取り組める環境が提供できている企業が、令和時代にも輝いていられるといえるだろう。

(2020年3月9日に執筆したものです)

 

 

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