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2021年2月18日 (木)

オートバックスセブンの異業種からの挑戦

カー用品販売大手の(株)オートバックスセブンが車を通じたライフスタイルショップ「JACK&MARIE」をオープンさせた。1号店は今年の3月に横浜ベイクォーターの3階に、この秋にはららぽーと名古屋みなとアクルス、横浜ラウンドマークプラザ、MARK  IS 福岡ももちと、一気に3店舗をオープンして4店舗体制となった。カー用品の取り扱いを本業とするオートバックスは国内603店舗、海外41店舗とグローバル展開をし、売上高も2116億円(営業利益72億円、ともに20183月末)。業界2位のイエローハットを売上高(1378億円)でしのぐが、その業界1位の企業がなぜ今、新規参入をするのか。

主力事業からの派生型ビジネスに取り組む

オートバックスセブンの売上高の84%を占める国内事業の中でも、主力事業はカー用品販売+サービスで8割を構成している。直近の売れ筋はドライブレコーダー関連で、これは今、話題になっている「あおり運転」からの防衛心理なども影響しているのだろう。その主幹の国内事業だが、同社では改革を進めており、2017年6月に2つのPBをローンチしている。1つが『クルマを使って楽しみたい(体験価値)』からJKM、もう1つが『クルマをもっと楽しみたい(自己表現)』からGORDON MILLERを。ともにクルマを通じて新たに価値を提供しようとするもので、JKMでは主にカーアクセサリーを、GORDEN MILLERではガレージキッドを展開している。

JACK&MARIEの基本スペック

さて、「JACK&MARIE」だが、西オーストラリアのパースを舞台に、オーストラリア人男性のJACKと、日本人女性のMARIEが、こよなく愛する「Café×Nature×Car life」がキーコンセプト。アウトドアライフを楽しむ人をターゲットとして、①「パッキング」、②「積み込む」、③「移動中も妥協しない」、④「車中泊」、⑤「サイトでCaféスタイル」の“5つの心躍るシーンを提案するライフスタイルブランドとなっている。

 ショップは、これらカー用品関係のPB商品を軸にしつつ、関連商品、雑貨をうまくセレクトして1つの世界観を作り出しているのが面白い。カー用品を背景にしているというよりも、ネイティブ感漂うアウトドアな印象を持ってしまうほど。実際、店舗の前面にはセレクトされたアパレル商品を着た男女のマネキンが出迎えている。

そのアパレルもシカゴのワークウエアブランドの「ユニバーサルオーバーオール」との協業商品や、国産ワークウエアブランドの「Johnbull」を品揃え。バッグ、シューズの他に腕時計、リング、ネックレス、サングラスやビニール傘まであり、ユニークな品揃えでは持ち歩き収納型オリジナル・スリムキャビネットやポータブルBluetoothスピーカー、レトロファン(扇風機)など。オリジナルデザインのポケットティッシュケースもあるなど、なかなか洒落た小物まで取り扱っている。

クルマ自体の価値観の変化に応じる

ファッションと同様にクルマについての価値観も変わりつつある。地方では生活の足として定着している半面、都会では若者を中心としたクルマ離れも指摘されている。クルマでもサブスクリプション化は始まっている。現在のカーシェアリングについて公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団による2018年3月の調査によると、車両ステーション数は1万4941カ所(前年比16%増)、車両台数は2万9208台(同19%増)、会員数は132万794人(同22%増)と、増加傾向にある。国内の新車販売台数も年間約400万台、中古車では800万台前後と、ここ10年くらいの推移を見ても増減をくり返しながらほぼ横ばい。少子高齢化を向かえている国内市場についてオートバックスセブンも従来のクルマを中心にしたメンテナンス、装備品といったサービスの拡張には限界を感じているはず。そこで同社の強みでもあるクルマを核に、ライフスタイルにまで取り扱い品目を広げた。又、ファッション性というスパイスを効かせた事によって、新たなお客との接点を模索してみた。

カーライフを背景とした品揃え

売場面積120坪(横浜ランドマークプラザ店)ある広い店内を、探索気分で回って見るだけの豊富なバラエティ感はある。「カーライフ」を背景にした品揃えは、他社での取り扱いがあまり無いため新鮮。それでいて店の雰囲気から“クルマ感”が程よく消されていて、アウトドアな印象にまとめられている点にはセンスを感じる。食器やホームウエアまで取り揃えられているのには感心した。カーアクセサリー用品でも日用品として代用できる商品もある。洗車ブラシは、家の掃除に用具として、LA直輸入のスポンジセットは台所用品としても使えるだろう。実際、オリジナル・マルチペーパーは、台所周りの掃除用として使えた。(ただし、調理用としては使えないので注意は必要)これは、取り扱い品目をライフスタイルにまで広げたから生まれた、新たなお客との接点となる要素だ。

家賃に見合った客単価と販売数を確保できるのか?

お店の運営面から考えると、テナント賃料や人件費、展示車のリース代などを合算してみるとショップコストは決して安くない。その割に取扱商品のプライスポイントが低いのは気になる。全体感からみるとセレクトしているアパレルは逆に割高に感じてしまうだろう。新規参入店の難しいところのひとつに知名度の低さがある。それは、よく知らない店で高額商品を買うこと自体に、お客にためらいが生じてしまい兼ねないからだ。そうなると買い上げ点数を上げるか、客数を上げるしかない。新規参入店としてここは、お客との信頼関係を築いていくことを優先に考えるべきだろう。例えばもっとオートバックス客との相互乗り入れメリットなど企業規模を活かした施策があって良いかも知れない。又、商品バラエティ豊かであるということは、言い換えると在庫リスクも抱えることとなる。当然、商品によって回転率にバラツキも生じていく中で、いかに鮮度のある売り場を維持させられるのか、ストアマネージメントが求められるはずだ。

先行企業からみるビジネスの規模感を想定

サーフカルチャーを感じさせるショップとしては、(株)サザビーリーグが運営する「RonHerman」や(株)アーバンリサーチの「UR Sony Label」、(株)アダストリアの「BAYFLOW」、(株)ライトオンの「Naughty Dog」(2020年に撤退)があるが、このショップ群には価格帯がハイエンドからロウエンドまでそろっている。「JACK&MARIE」のこれら同テイストのショップとの違いのひとつにアパレル構成比の低さを武器にしたい。豊富な雑貨、用品の品揃えを特徴として独自のポジションを築いていけるのか、興味のあるところだ。

現在、横浜を中心に店舗展開しているのは良かったと思う。やはり、日本のサーフカルチャーを発信する地として横浜はベストな選択。しかも米国産を中心としたクルマ文化も盛んな土地であることを考えても良い環境なのは確かだ。

後は、将来的にどのくらいの店舗数の規模感を考えているかだ。それはプライスレンジにも関係するが、ハイエンド側から順に「RonHerman」で14店舗、「UR Sony Label」のオンリーショップで8店舗、「BAYFLOW」46店舗、「Naughty Dog」で32店舗(2020年に閉店)。

「JACK&MARIE」は、「UR Sony Label」と「BAYFLOW」の中間値くらいの価格感だろうか。しかし、思い切って品種を縛り込んで、生活雑貨中心とした店舗業態にして出店しても面白いかもしれない。そうすれば、パルグループの「salut!」(36店舗)あたりの雑貨店が競合としては浮上しそうだ。

 

オートバックスセブンの直近10年の業績推移を見ると2009年の売上高2591億円をピークに、ややシュリンクしている印象だ。海外進出もフランス、タイ、シンガポール、中国、マレーシアと5カ国に進出しているものの、苦戦しているように見える。他にディラー事業、BtoB事業、ネット事業、ドローンの販売と主幹業務以外の収益の拡大を計画中だ。

今回のチャレンジもそうした動きのひとつとして新たな事業の柱となり得るか今後の戦い方に注目していきたい。

(2018年12月20日執筆したものです)

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