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2021年8月 6日 (金)

冬季オリンピックのもう1つの見どころ

もうすぐ始まる平昌オリンピックは、大韓民国の北東部に位置する人口約46,000(2004)ほどの場所で開かれる。北朝鮮参加による南北統一チームの結成や日本の首相の出席などスポーツ以外の政治、外交を含めた国際情勢にまで影響が及ぶイベント。当然、出場する日本選手の活躍に期待しながら、今回は冬季オリンピックとファッションについて少し考えてみたいと思う。

 

少し変わった形で始まった冬季オリンピック

公益財団法人オリンピック委員会によると、冬季オリンピックは通常「オリンピック」と称される夏の大会の開催から、遅れること28年。第1回大会はアルプスの最高峰モンブランのふもとにあるリゾート地シャモニー・モンブラン(フランス)で開かれた。しかし、実はこの大会はフランスが主催、国際オリンピック委員会(IOC)が名目的に後援して実施された『国際冬季競技週間(International Winter Sports Week)』で、これを翌1925年になってIOCが『第一回冬季オリンピック競技会』として追認した、という奇妙な経過をたどって、やっと日の目を見たものだった。

 そもそも冬のスポーツ競技といっても元来は、北方に居住する人達の交通、輸送手段が近代になってスポーツ活用されたもので、あらゆる地域で利用出来る訳ではない。一年を通して「雪」を見ない国もある。オリンピック憲章の根本原則にも掲げられている5大陸の対象としては、いささか地域色のある国際スポーツイベントといわざるを得ない。

しかし、この「雪」を見ない国が冬季オリンピックを目指したエピソードがある。それは1994年公開の映画『クール・ランニング』によって、広く知られるきっかけとなった。

南国ジャマイカを舞台に、男子4人乗りソリ(ボブスレー)競技に参加するまでを描いた。「雪」と無縁な国でチームとして冬のオリンピックに取り組む姿勢が何とも愛おしく描かれた作品だ。今回の冬季オリンピックでも「下町ボブスレー」プロジェクトとして東京都大田区にある複数の町工場で作られたソリを、当のジャマイカチームに供給している。

今大会では日本代表チームは出場を逃してしまい、1972年札幌大会からの連続出場が途切れてしまったが、日本が誇る町工場の技術が活きたソリに乗り込むジャマイカチームを、応援してみるのも良いだろう。

 

日本代表ユニフォームについて

 オリンピックはスポーツイベントであるが故に、競技ウエアはデザイン以上に追求されなければならないのが機能。勿論、プロトタイプとして開発される事もあるだろうが、

基本は競技愛好者に向けたものが多くあまり一般消費者に意識を向けた商品開発はしない。

そうした中で注目したいのは開会式。各国の様々なプレイヤー達がその国でデザインされたファッションを身にまとって一同に登場するパフォーマンスは、それぞれのお国柄が色濃く出ていていつ見ても楽しい。そして競技用ウエアに比べ開会式で着用するアウター類は一般向けに商品化しやすい。夏季・冬季に関わらず開会式、閉会式自体は、その国の技術と芸術性を世界に広くアピールする意味合いもあって、国家プロジェクトとして取り組まれるケースがほとんど。ひとつのエンターティメントとしても充分に楽しめる。

開会式は29()20:00から始まって22:30に終了予定。(日本との時差はない) 当初は低緯度で開催する平昌の雪不足が心配されたが、ここ数日の現地天気予報を見る限り、問題無さそうだ。それより屋根が無い会場での開会式や閉会式は相当な寒さが予想される。

日本選手団が着用する公式服装はAOKIが手掛けるのだが、ジャケット、ブレザーと云った正装で、オフィシャル・スポーツウエア類はアシックスが担当する。開会式は寒さから各国代表は皆、スポーツ系コートやダウンジャケットを着用。前回大会のソチオリンピックの日本代表団は、デサント社の白のウォームコートにネイビーパンツを着用していた。

今回、アシックスのコンセプトは「PROUD OF JAPAN(日本を、誇れ)」で、朝日が昇る力強さをイメージした赤(サンライズ レッド)のウォームコートに、海のような深い青(ジャパン シー ブルー)のパンツといったスタイリングでの登場となるようだ。

 

各国の代表ファッションにも注目!

冬季オリンピックに参加する主要各国の開会式ウエアにも注目したい。イタリアはArmani(アルマーニ)がオフィシャルユニフォームを担当するようだ。ジョルジオアルマーニから派生したセカンドラインの「エンポリオアルマーニ」のスポーツウエアチームが手掛けた。ミッドナイトブルーの生地にイタリアの国旗が入る予定。フランスはLACOSTE(ラコステ)が担当、上下白のセットアップに赤とネイビーのダブルジップが、何ともエスプリの効いた感じだ。ドイツはアディダスが担当、メンズはベージュのロングダウンパーカーでレディスの方はオリーブグリーンのブルゾンコートタイプと、メンズ・レディスでデザイン、カラーが違っているのが特徴。米国はラルフローレンで星条旗カラーのネイビー、レッド、ホワイトの3色ボーダー切り替のマウンテンパーカーを身に纏って何ともジーンズカジュアルな雰囲気。カナダはアウトドアブランドのコロンビアが担当、ドーピング疑惑により出場が危ぶまれているロシアチームでは、国産のスポーツカジュアルブランドのZASPORTSが担当している。

総てをチェックした訳では無いが、私、個人的にはフランスチームのウエアが好みだが、ファッションとしてのパワーを感じるのは米国のラルフローレンだ。今、ファッショントレンドの流れから若者達の間で古着ブームが再燃しつつある。その中でもラルフローレンの『ポロスタジアム』という1992年のバルセロナ五輪に向けて作られた限定コレクションが人気だ。その希少性からか現在も古着市場では高値で取引、昨年の9月には限定復刻版が発売されたが、行列を作って完売商品が続出したほどの人気だった。どちらにせよ、各国の代表団が開会式に身に着けたファッションはその時代を大きく取り入れたもの。

世界中の現在のファッショントレンドや、それぞれの国のファッション感度を覗き見る気分で観賞してみるのも面白いかも知れない。

 

東京五輪に向けて地元開催のメリットを活かしたい!

今回、韓国では「平昌ロングダウンコート」に人気が集まったそうだ。平昌五輪記念公演で人気アーティストが着た姿がSNSなどで話題になって、一気に関心が広まった。

又、有名ブランドのダウンコートが3050万ウォン(35万円)する中で、「平昌ロングダウンコート」は14.9万ウォン(15千円)と、購入しやすい価格設定だった事も影響した様子。3万枚という生産枚数とお手頃な価格のバランスが取れていたのか。と云うと、微妙な判断にはなるが地元開催を盛り上げる意味では良いニュースになったのではないか。

 オフィシャル・スポンサーをきっかけにブランドが生まれたケースもある。それはデサントの「オルテライン」だ。先にも触れた通り、前冬季オリンピックの日本代表選手団のために、生地を熱圧着して内部にダウンを仕込む技術を開発して、ダウンを固定するためのステッチを要しないダウンウエアを完成させた。デサントの自社工場のある岩手県水沢の地名を冠して水沢ダウンとして国内製造のハイクラスダウンを核商品に、2012年にブランドデビューした。今年も多いに人気を博したユニクロシームレスダウンは、デサントの水沢ダウンの技術を廉価に提供した商品といっても過言ではない。そう云った意味でも日本のダウンジャケット市場に大きなインパクトを与える事になった。

 

まとめ

 冒頭で語ったように競技ウエア自体は、一般消費者に向けられるものでは無いが最期に取り上げたデサントの「オルテライン」の様に、技術転用したケースもある。オリンピックを広告媒体として捉える事も出来るが、アパレルについてはサポートと供に投資して、技術移植によるビジネス転用させる事が重要だ。AOKIについてもパーソナルオーダーシステムの活用によって選手達の嗜好の選択肢を増やして対応している。

ファッションそのものの進化の歴史を観ても、軍事に関わる仕様が後に一般化されるケースが多い。これからはスポーツ競技からもどんどん技術移植して進化して欲しいと切に願うし、東京五輪に向けても大いに期待したい。これから始まる冬季オリンピック、競技観戦は勿論のこと、ファッションについても注目して観賞してみて欲しい。

 

 (2018年1月24日に執筆したものですOlympicrings1939227_960_720_20210806062401 Olympicrings1939227_960_720 )

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