2021年2月16日 (火)

「コンテンツ・ビジネス」はアパレル小売りも救う!

放送、映画、音楽、漫画、アニメ、ゲームも含めた知的生産物を取り扱うことを「コンテンツ・ビジネス」と呼ぶ。店頭ではさまざまなコンテンツを取り入れたプリントTシャツの品揃えが華盛りだ。定番キャラクーに加え、ロードショーに合わせたプロモーション、企業コラボ、周年企画とアパレル小売りにとってコンテンツ・ビジネスへの取り組みは年々重要度を増しているように感じる。

 

半袖Tシャツの着用が急増している!

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ココベイ(株)が毎月行っている定点観測資料をまとめたグラフに注目してほしい。この表はヤングメンズ(推定年齢20代前半~30代)を対象に、渋谷から原宿の中間くらいの地点で着用実態調査をまとめたもの。各年度の68月にかけて夏のスタイリングを計9001000人分がサンプル数となる。

目を見張るべきは「半袖Tシャツの着用率の高さ」。特に3年前の2016年ごろからの急速な伸びは、トレンド発信者としての役割を担っている若者市場を中心に夏のTシャツスタイルが急激に増えていることを示している。2016年はお洒落な若者を中心に原宿エリアの古着店等の人気が再燃し始めた頃で、大阪の「サントニブンノイチ」が原宿にオープンしたり、タレントのりゅうちぇるの個性的なファッションが注目されたりした頃にあたる。 

もう1つ、注目したいのが「プリントTシャツの着用率」。ファッショントレンドの変化パターンの1つに「無地→色→柄」の順でトレンド変化が生まれるケースがある。そのパターンに従えば11年前の水準にまで至っていないものの、半袖Tシャツ全体の着用率上昇とともに、これからのプリントTシャツの伸長度に期待がかかるのも必然的と考えられる。

だから、Tシャツとの親和性が高いコンテンツ・ビジネスが重要だと思っているのだ。

 

日本発のディズニーの新キャラクターも登場

日本のコンテンツ・ビジネス史の中で、大成したモデルケースの1つに東京ディズニーランドが挙げられる。1983年の開園から今日まで来園者数を順調に伸ばし続け、2001年のディズニーシー開園以降、その数は2施設合わせて年間で3200万人を数えるほど。そんなコンテンツ・ビジネスの老舗・東京ディズニーランドで今年、完売御礼のキャラクター商品が産まれた。

その名は『うさピヨ』。春先に行われるイースターイベントに関連して作られた新キャラクターだ。この新キャラクターは米国ではなく日本発のディズニーキャラクターとなる。老舗コンテンツ・ビジネス企業でさえ、イベントを盛り上げる起爆剤の1つとして新キャラクターを開発したわけだが、これは「新規性」とディズニーランド内でしか販売されない「希少性」が組み合わされたケースといえる。

 

ユニクロUT『KAWS』では争奪戦が繰り広げられた

先日、テレビのワイドショーも賑わしたユニクロUTの『KAWS』コラボTシャツ。中国本土で繰り広げられた激しい争奪戦の模様や日本の銀座店にオープン前に列を作っている人たちの様子がテレビでも取り上げられていた。日本国内では中国のようなパニックは見られなかったが、それでもインバウンド客が多く訪れる店舗では発売当日か2日目でこのTシャツが完売した店舗が多数出たようだ。

ユニクロ側もここまでの反響は想定していなかったようで、全国のユニクロ店舗で展開している『KAWS』商品を主要店舗に集結させて再販して完売させるよう。中国人を中心にここまで人気が集まった背景には『KAWS』とのコラボレーションが今シーズン限りといった「希少性」が刺激されたと考えられる。

『愛は地球を救う』のチャリティTシャツは今年も人気

そして、イオン。毎年取り組んでいる日本テレビ主催のチャリティ番組『愛は地球を救う』のチャリティTシャツの販売をしている。今年のチャリティTシャツのデザインを手掛けたのは嵐の大野智さん。前評判も上々で発売当日の615日から売り切れ店舗が続出し、オンラインストアでも完売状態。売り切れ店舗では、次回入荷予定日(62728日)を告知して対応している。収益金はチャリティにまわるので喜ばしいことではあるが、衣料品不振の続くイオンにとってチャリティイベントであってもTシャツ目当てに来店が見込まれる訳で、こうした嗜好属性のはっきりとしたお客に向けた品揃えを、逃さず提案すべきだろう。

しまむらはターゲットを絞った取り組みを進める

しまむらもコンテンツ商品への取り組みは積極的。周年イベントでは『ももクロ』や『YouTuber』とのコラボレーション、そして世界に3億人のユーザー数を誇るバトルロイヤルゲームの『荒野行動』をはじめとした『艦これ』『アイドルマスター』『刀剣乱舞』などだ。その中でも根強い人気があるのは『新日本プロレス』コラボで、他社での取り扱いの少なさも影響しているのかもしれない。

なかなかモノが売れない時代にあって、こうしたターゲットを絞ったアプローチは、ある程度の売上げが見込めるものの、ファン以外からは見向きもされないことから需要分母が限定的というデメリットもある。そのため、一時的な特需を取り込むだけではなく、継続性のあるファン作りを目指すような取り組みが必要になる。

 

広島東洋カープのグッズは球団経営の柱になった

面白いところでは、ファンの心酔度が高いことで有名な広島東洋カープ。特にグッズの品揃えのバリエーションは他球団と比較にならないほどに充実している。2019年カタログを見ても人気キャラクターとのコラボレーションやアパレルブランドとのコラボレーション、往年の選手をあしらった商品やグッズデザインに特徴を持たせたシリーズなど実に豊富。こうしたカープグッズの売上げは約54億円に上り、今や入場収入と並ぶ球団経営の柱となっているそうだ。

親会社を持たない市民球団として創設された経緯もあって、昔から地元からの熱烈な支援はあった。それが2013年に初めてクライマックスシリーズに進出、2015年の黒田博樹投手、新井貴浩選手の復帰を引き金に、今や地元民でさえ観戦チケットがなかなか手に入れ難くなるほどの人気球団に成長した。リーグ3連覇という強い球団になったことも大いに影響していると思うが、それ以上に球団関係者がファン層の拡大と継続性のあるファン作りに取り組んだケースとして参考にしたい事例だ。

 

「お祭り騒ぎ」で終わらせないために必要なこと

ファッショントレンドの流れもあって、Tシャツは「8090年代リバイバル」をベースに、当時流行ったロックバンドやヒットした映画の名作シーンのものまで新たに登場している。デザイン、品質もピンキリとあって飽和寸前とまではいかないものの、プリントさえしていれば何でも売れてしまうようなコンテンツはごく一握りしかない。

特にターゲットを絞り込んだコンテンツでは商品完成度についてtwitterを通じて瞬く間に口コミが拡散されてしまう時代。何でもあるではもはや特徴とはいえず、その領域はネットの世界で完結してしまう。このあたりも踏まえた上で、デザイン性は当然としても、コンテンツ・ビジネスそのものの新規性と希少性を推し量る必要があると思う。

そして、それは単発の「お祭り騒ぎ」で終わらせないための取り組みも同時に準備しておくことを意味する。そのために売場を通じていかに驚き、共鳴、学びを体験させ、来店したお客にいかに深く感動を残せるかが重要となってくる。

『ワンピース』1/1スケール ストア・アイコンの意味

キャラクターストアでよく見掛けるのは11スケールのストア・アイコンは観光客や来店客に記念にもなるフォトスペースの提供はスマホ時代の現在には欠かせない。東映アニメーション(株)と(株)ムービックが共同で運営しているテレビアニメ『ワンピース』のオフィシャルショップでは、作品中の有名なシーンを模したポーズのストア・アイコンを使い、お客もその感動シーンに参加したかのような疑似体験を与える。これは11スケールのストア・アイコンによる驚きと、好きな作品の中に入り込むという共鳴が得られたケースだ。

学びの事例では、『新横浜ラーメン博物館』1階の展示ギャラリーで行う日本におけるラーメンの歴史の紹介、中国麺料理との違いやラーメンの要素についてテイスティングしながら学べる無料体験コーナーがある。「食」以外にも体験しながら学べる取り組みを行うことで、ラーメンについて造詣を深め、ラーメンファンづくりを進める例だ。

単発で終わらせないためには、コンテンツという感動型ソフトを使ったシナジー効果を最大限に引き出す工夫と環境作りが重要。そうして、コンテンツ・ファンづくりを進めることがアパレル小売りにとっても、現状の苦境から抜け出す方法の一手段になると思っている。

(2019年7月1日に執筆したものです)

 

 

2020年10月17日 (土)

2020年1月寄稿:島忠プロデュース「CARABINER」(カラビナ)の公算を問う

首都圏を中心に展開するホームセンター島忠のショッピングセンター業態「ホームズ」。2019年1031日、埼玉県所沢市にある「ホームズ所沢店」を売り場面積4242坪へと約2倍の拡張リニューアルを行った。そのリニューアルオープンの目玉のひとつに島忠初となるアパレルブランド「カラビナ」の出店があった。自社売り場内での展開ではなく、あえて単独店として出店させたその狙いと今後について考察してみたい。

 

独自性を築けるのかが鍵

1階からエスカレーターで昇った正面に位置する好立地で、隣にはGAP OUTLETとスポーツ用品MIZUNOに挟まれている。この2階は家具インテリアを中心としたフロア構成になっているものの、他に100均のダイソーやヘアカットや女性専用フィットネスといったサービス業態も含めた11の専門店をテナントしている。その中でアパレル専門としてはGAP OUTLETと「カラビナ」の2店舗のみ。ファミリーイメージの強いGAPに対して、「カラビナ」はレディス、メンズに特化した形で展開。GAPの方が売り場面積も格段に広く品揃え点数も多いという条件下では、ファッションテイスト軸として、GAPと被らず商品特性についても明らかに優位に立てるような商品政策が求められてくるはずだ。

その為か「カラビナ」は「My Utility Wear 夢中になれる服」をテーマに撥水、吸水速乾、防寒などの機能性と耐久性を兼ね備えた素材を中心に、シンプルでスタイリッシュなデザインを採用してリーズナブル価格で展開していくとのコンセプトには納得がいく。

 

しかし、およそ100坪ほどの売り場にシンプルなパイプだけをつなぎ合わせた店舗外装に新しさは感じられても、それ以外に感じ取れる情報量は極めて少ない。採用マネキンも何ら特徴のないポージングで、商品性能をアピールする様な仕掛けもなく商品がハンギングされているだけではアピール不足と云わざるを得ない。その結果、店舗の新規性よりも認知・知名力の低さの方がまさってしまい、新規によるお客の立ち寄りはあまり期待できないのではないか。

プライスラインは税抜き価格で¥298/¥398/¥1,980/¥2,980/¥3,980/¥4,980/¥5,9807ポイントのプライスを揃えている。品揃えの最も多いプライスポイントは¥1,980/¥2,980/¥3,980。普段使いを意識した価格帯と考えられるが、隣接するGAP OUTLETはもちろんの事、半径5Km圏内にあるジーユー(4.4Km)やしまむら(3.2Km)、ワークマンプラス(5.3Km)と比較しても決して「安さ」が際立つことはない。

マネキンに着せたコーディネイトを見ると着装シーンが漠然としてしまっているせいか、少しお洒落なワンマイルウエアか普段着といった印象しか持てずもったいない。ブランド名となっている「カラビナ」は、アウトドア用具でもあり、ブランドアイコンにもなっている。本格的なアウトドア装備までこだわらなくてもBBQやライトキャンプ向けなどシーンを明確にした機能で訴えていくやり方にしないと、今後の成長は期待できそうにない。

 

アパレルショップ運営方法に課題も

そして何より驚いたのは、ショップスタッフが不在だった点。お邪魔したのは土曜の昼だったのだが、ランチ休憩か人手不足による欠員かはわからないがオープンして未だ2ケ月も経っていないのに。店内にフィッティングルーム、靴まで取り揃えているにも関わらず「ご用命の際はミズノのスタッフへお声掛けください」では何ともお粗末な対応である。

アパレルビジネスを舐めているのか、セルフ対応の店舗オペレーションに浸かってしまった結果、お客の心理が理解出来ていないのだろう。当然、こんな状態では結果など出るわけもなく、店内では早々にMAX70%OFFの処分セールを実施していた。

 

 市場規模の停滞感漂うホームセンター業界では、アパレルに積極的に取り組むケースが見られる。わざわざ流通在庫も著しく市場飽和とまで指摘されるようなアパレル市場に。その理由は「ワークマンプラス」の成功が影響しているのではないかと推察する。成功要因は明らかに違うものの、アプローチの仕方によってアパレルもまだまだ成長余地アリと判断したためのものだろう。業界大手のカインズでも今秋からエドウインとコラボレーションした新ワークウエアブランド「EDW」をローンチ、コーナー展開している。

ホームセンターという売り場面積の広いロケーションの中で用途目的以外のニーズを引き出さないといけないファッション性を売り込むのは難しい。そのため「EDW」ではコーナーを埋没させないように「イロ」で訴求した。赤いTシャツトルソーやカウンター、レールPOPなどの販促物を赤く目立たせ、店頭ではコンパクトモニターを用意してPVを流してイメージ訴求につなげた。今回の「カラビナ」のリリースについても同じような選択肢が生まれたに違いない、自社内かスピンアウトか。後者を選んだ島忠の判断はより多くの人に認知してもらう点については正解だったかも知れない。

スペシャリティであるべき

 総花的な広がりを見せるアパレル市場に向かって、新規参入を図っていく効果的なやり方のひとつに『専門特化』がある。身近な成功事例はワークマンプラスで作業服というカテゴリーを専門に扱ってきた。そのカテゴリーにおける機能や快適性を探求して、NBスポーツのようなデザインエッセンスによって同業他社と差別化を図った。しかもそれらを安価で提供した結果、多くの支持を集めることが出来ている。そこには作業服という業務用ニーズをベースとした既存客があることを忘れてはならない。そういう意味においては未成熟な業務用ウエアというカテゴリーの発見も肝要となろう。未成熟な業務用とは既に着用しているものの何かしらで代用してしまっていたり、機能ばかりに特化してしまい格好良くなかったりするウエアのこと。『専門特化』という切り口で見た場合、「カラビナ」には専門性が感じられない。仮に休日着、遊び着だったとしても家のくつろぎやライトアウトドアでも着用メリットや着た後の爽快感がイメージできるような演出が必要だ。

 

そして、ここからが問題である。なるべくしてなった結果から、一体何を教訓として得るのだろうか。初めての取組に時間をかけ労力とお金をかけて、自分達にフィットしなかったと学習するのか、それとも反転攻勢、修正を加えながら運営し続けるのか。スピーディな時代の中で、インパクトが残せない存在は忘れ去られてしまうだけ。新規性以外に存在感を知らしめるのは並大抵にはいかないのも事実ではあるが、これからの失地回復に期待したい。

2017年9月20日 (水)

GUのデジタル店舗はオンラインとリアルの実験

先週の15日(金)OPENしたGU横浜港北ノースポート・モール店舗に行って来ました。
3連休の真ん中の雨模様でしたが、大勢の来店客で店内は賑わっていました。

この店舗は、売り場面積約800坪と商品ラインナップは従来の2倍に拡充しているのと
電波を用いタグデータ非接触で読み取るシステムRFIDを導入した#オシャレナビカート
(モニター付ショッピングカート)で新たなショッピングを体験出来る売り場になっている。

<オシャレナビカートの基本メリット>
①カートを押して売り場を歩くと…
売り場に設置されているビーコン(発信器)に近づくと
売場のオススメ商品やプロのスタイリストによるコーディネイト情報がモニターに表示。
②備え付けセンサーに商品タグをかざすと…
店舗、オンラインストアでの在庫状況や購入者からのレビュー、モデル、
一般人のコーディネイトが1,000種表示される。


モニター付きショッピングカートは米国が先行
A:メディアカート(ディスプレイ付きショッピングカート)
B:モディブ・メディア(手持ちの小型機器)
米国ビデオカート社は1992年迄に全米200店舗以上のスーパー、チェーンストアで2万台以上のビデオカートを運営。
ウォルマート、トイザラスで試験的に導入、その後"アクティビティパス"機器も登場したが余り上手くいかなかった。
現在、テキサス州にあるメディアカート社は、ビデオカートの良い点を活かして×マイクロソフト社と共同開発したディスプレイ画面とデバイスが付いた次世代ショッピングカートで
あるA:メディアカートを販売している。

米国スーパーのセーフウェイが開発した"マゼラン"が続く。当初はメディアカートモデルからB:モディブ・メディアへ発展、現在100店舗以上で用いられている。

日本では大日本印刷が2003年に1台50万円で開発してました。
         ↓
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2003/09/10/414.html

目新しさ好きな人には、持ってこいの玩具感覚で楽しめます。
ファッション売り場をカートで引く行為自体に、買い上げ点数の増加は期待出来そう。
このシステム自体は近い将来、スマホで体験出来るでしょう。
店員さんの接客より、商品レビューを確認しながら購買を決める人も増えてくる。
そんな近未来に想いを馳せてみました。
では。