【不易流行】_麻について
すっかり夏の定番素材として定着した「麻素材」は
綿や絹よりも歴史は古く繊維材として使われてきました。

なんと釣り糸にも「麻」を使っていたようです。
今回は、釣り糸を通じて『技術革新』によって
豊かな生活を手に入られたエピソードを紹介したいと思います。
一本釣りは針に麻糸を結びつけて、
それで魚を釣っていましたが、今から240年前くらいの頃、
テグスを釣り糸に用い始めました。
この糸は半ば透き通っていますから、水の中に浸けると
有るか無いか見分けがつかないほどです。
だからこれに釣り針を付けて餌を掛けておけば餌が有るように見えます。
その上、弾力があるので魚がよくかかります。
(宮本常一『海をひらいた人びと』より)
魚の目に見えず弾力に富んだテグスは、一本釣りの村では
どこでも重宝され、瀬戸内海のいたるところの漁村で使われた。
大阪には中国からテグスを仕入れる問屋ができ、テグスで獲れた大漁の魚は
大阪・高松・広島・松山へと売られていった。透明な釣り糸は生産を高め、
流通を広げた。技術の革新が人びとに富みをもたらし、生活を豊かにして
いったのである。
(畑中章宏『21世紀の民俗学』より)
テグスとはテグスサン(Eriogyna pyretorum)という
ヤママユガ科に属する蛾の幼虫の絹糸腺から
作ったテグス(天蚕糸)や、スガ糸(絹)などを使った。
現在ではナイロンで作られている。
いつの時代も快適で便利なコトを、追求していくことで進化が得られる。
探求心を忘れないでいきたいものです。
では、また。